創始者 アイダ・ポーリン・ロルフ博士
(c) Ronald A Thompson
ストラクチャル・インテグレーションの創始者であるアイダ P.ロルフ博士は、1920年にコロンビア大学医学部で生化学の博士号を取得し、その後12年間ロックフェラー研究所の有機化学および化学療法の部門で勤務しました。
ロルフ博士は1930年代の10年間を自分自身の健康上の問題と息子の側湾症の解決策を捜して過ごしました。当時の医学的治療手段に強い不満を抱いていた彼女が向かったのは、オステオパシー(整骨医学)、カイロプラクティック、ヨーガ、アレクサンダー・テク二ーク、ホメオパシーといった代替的手法探索の道のりでした。
1940年代、独自のワークを行うようになっていた彼女の元には、助けを求める人々が詰め掛けるようになっていました。当時、彼女が科学的な観点に立ち続けたにもかかわらず、多くの解決策は “直感” のようなものを通じて与えられたといいます。それはたいてい、他のどこにおいても打つ手が見つからず、最終的に彼女に助けを求めてやってきた、重い障害を持つ人々にワークを行っている時であったそうです。このようにして発展していった彼女の技法は、やがて、『 ストラクチャル・インテグレーション 』の名で知られるようになります。
“ストラクチャル・インテグレーションのもたらす福音とは、次のようなものです。からだが適切に機能しはじめると、重力はその中を通って、流れてゆくことができます。その時自然に、からだが自らを癒すのです。”
アイダ P.ロルフ
ロルフィング? ストラクチャル・インテグレーション?
(c) Ronald A Thompson
ストラクチャル・インテグレーションは、ロルフィングの別名でも知られています。ロルフィングという名称*1は、1960年代にアイダ・ロルフ博士がカリフォルニア州のエサレン研究所を訪れていた時期に、彼女が教え、行っていたワークに対して、彼女のクライアントであった人物が名づけたニックネームです。
一方、ストラクチャル・インテグレーションとは、ロルフ博士自身が、自らの開発したボディーワークのシステムに名づけた名称です。数年間に渡る熟考の末、彼女が慎重に選び出したのは、それ自体がワークのプロセスを描写している名前、つまり “人間の構造の統合(Structural Integration)” でした。
- *1
- 1979年、ロルフ研究所は 'ロルフィング' という名称に対する商標権を取得しました。
- 'ロルフィング' は現在、同研究所のメンバーだけが活動に使用することのできる登録商標 となっています。
“ストラクチャル・インテグレーションは、治療ではありません。それでも、『治療』 という言葉を使うとすれば、重力が、それを行う 『治療家』 です。”
アイダ P.ロルフ
ストラクチャル・インテグレーション施術者養成プログラムの開発
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ロルフ博士は、1940年代にストラクチャル・インテグレーションを創始し、その後1979年に82歳でこの世を去るまで30数年間の歳月をかけて、さらにその技法を洗練させると共に、人類にとっての貴重な財産とも言えるこのワークが、確実に後世へと受け継がれてゆくようにと、プラクティショナー(施術者)養成のためのトレーニングプログラムを開発しました。トレーニングは、博士亡き後、国際ストラクチャル・インテグレーション連盟(IASI)に加盟する12の養成校によって行われています。それぞれの学校が少しずつ異なる点を強調しつつ、独自の教育を行っていますが、ロルフ博士の遺した10セッションのレシピ (*2) を教育の基幹に据え、人間の構造・機能と重力との関係への理解を深めるための研究に携わっているという点では共通しています。
施術者としての認定を得るにあたっては、解剖学、生理学、キネシオロジーなどへの幅広い知識、身体知覚能力、そして神経・心理的な反応に対応することのできる成熟した感受性が要求されています。
- *2
- “レシピ”とは、ロルフ博士が自らのワークの原理と実践を次の世代に伝えるために選んだ教育の手段であり、彼女が自らのワークの根底に横たわる意図を、このワークの学習に取り組む者達が理解、咀嚼できるサイズの10の意図の塊に砕き、系統立てたもののことです。
- ロルフ博士のレシピは、このワークを経験するそれぞれの人に、地球の重力場における垂直中心軸でのからだの伸展と拡大、再編成という共通の影響を与えるべく語りかけている言語であり、施術者をこの技術の熟達へと導く地図ともなっています。
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人間に勝ち目のない重力との戦い、それは、ある人には腰や背中の激しい痛みという形で現れているかもしれません。ある人にはあからさまに崩れた体形として、または慢性の疲労感として現れている場合もあるでしょう。またある人は、それを自分を取り巻く環境への絶え間ない不安として感じているかもしれません。
人は40歳を過ぎ、このような変化が自分の身にふりかかっても、 “年だから” と言って片付けてしまっているようですが ・・・。
しかしながら、今述べたような全ての兆候は、それぞれの人に共通して存在する問題点を指し示しているように思われるのです。そしてそれは、あまりに顕著に彼らの身体に表れているために、また、周りを見回しても皆がそうであるために見過ごされてしまっているのです。
つまり、彼らのからだがバランスを失っているということです。
人々は重力を敵にまわして、戦っているのです。
アイダ P.ロルフ
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